約 1,206,891 件
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/942.html
ねぎぼうの140文字SS【9】 1.ラブせつで『愛されるのに臆病すぎて、』/ねぎぼう 「明日新しいベット届くって。今夜もあたしの使って」 「……ごめんなさい」 「そんなこと気にしなくていいんだよ、せつな」 ―― 愛されるのに臆病すぎて、それ故自分に言い聞かせる。 今はただ『護るため』生かされているのだ。 この世界を、この街を、そして毛布を敷いて隣で眠っている、この大切な人を。 2.ラブせつで『自分のモノには名前を書きましょう。』/ねぎぼう 「トリックオアトリート!」 ハロウィン体験の3人が桃園家に。 ラブは隼人と瞬にお菓子を渡すと、せつなには 「もうないんだ。悪戯、する?」 四つ葉中学での『自分のモノには名前を書きましょう。』という 指導を思い出し、ラブの頬に『せつな』と書いた。 「あたしもいいよね」 せつなの頬には『ラブ』。 3.ラブせつで【 おしえてあげる 】/ねぎぼう メビウスが正しく管理する現在と予定が全てで、その結果のみが在るべき歴史。 自分達は他のパラレルワールドの歴史も塗り潰そうとしていたのだ。 「大丈夫だよ、せつな。歴史の勉強ならおしえてあげるから」 (せつなが困っているのなら……) その思いだけで申し出る。 「ありがとう、ラブ。お願いね」 4.ラブせつで『ふたりぼっち』/ねぎぼう 「ウエスターとサウラー、ずっとふたりぼっちだったんだね」 「ええ?そう……ね」 「でも今はせつなもいるんだよね」 「私だけじゃない。ラビリンスの人たちみんながいる。そして私達の心の中には貴女達がいるの」 「うん!あたし達、ずっと一緒だね」 せつなとだったら……その思いにラブは蓋をする。 5.ラブせつで『上手な甘やかし方』/ねぎぼう 「せつな~ニンジン代わりに食べて」 「しょうがないわね」 「ありがとう!助かるよ」 「あんまりラブを甘やかしちゃダメよ、調子に乗るから」 せつなはニンジンをひとかけら口に入れるとそのままラブに…… 「せつなちゃん、上手な甘やかし方わかってるみたい」 「でも、これってどっちが上手かしら?」 6.ラブせつで『誰も欲しくない』/ねぎぼう 友達のフリーマーケットに出す品物が足りないって聞いたみたいで、 自分も手伝うんだってティッシュケースとかいうのを一晩中縫っていたけど…… 「こんなのじゃあ誰も欲しくない、よね?」 「そうね……でもラブは頑張ったわ」 「ありがとう、せつな!」 「で、これ、どこからティッシュを入れるの?」 7.ラブせつで『人生で一番』/ねぎぼう 『今度の追試で赤点だったらダンス禁止だってミユキさんに言われちゃった。人生で一番のピンチだよー』 あのときの戦いは?とは思いつつも、メールを読み進めるせつな。 『こうなったらめちゃくちゃ勉強して、ピンチはチャンスにしちゃうんだから!』 (ラブったら……) 本当にそうしそうだと思えた。 8.ラブせつで『日常崩壊寸前』/ねぎぼう 世界征服の力が押し寄せ日常崩壊寸前の今、 この街を、世界を守ってきたプリキュアが自分の娘であったことを知らされるあゆみ。 この世界を救える唯一の存在だとしても、それ以前に二人は大切な娘。 危険にさらすわけにはいかない。 「あきらめるまでこの手を離さないから」 その腕をつかむ手に力を込める。 9.ラブせつで【 明日になったら 】/ねぎぼう 明日になったら、せつなは旅立つ。 「明日なんて……来なければいいのに」 しまいこんでいた心がふとこぼれる。 親とはぐれることを懼れる幼子のように強く握るラブのその手をせつなは包みこむ。 「ラブの夢は何?」 「ダンスで、世界に愛を伝えること!」 「その世界には、私達もいるから」 「……うん!」 10.ラブせつで『宛先のない手紙』(with 5GoGo)/ねぎぼう ある日大きな鳥が飛来した。 鳥は少年に姿を変え、宛先のない手紙を少女に渡した。 「ありがとう」 少女はその手紙に笑って、むくれて、涙ぐむ。 返事を書く間、ささやかな茶菓子を出す。 「貴方の国と同じ、この国も今、再建中」 「でも、何も壊れてないぜ?」 「一番大きなものを壊したわ、この手で」
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/264.html
第7話『帰ってきたせっちゃん――ある日のせっちゃん。ラブとせつなの料理対決――』 少し、強めの日差し。 梅雨を間近に控え、夏の到来を感じさせる。 熱気を払うように、一陣の風が吹きぬける。 せつなは片手でスカートを、もう片手で帽子を飛ばないように押さえた。 のどかな土曜日のお昼過ぎ。 せつなはラブと、商店街のスーパーにお買い物に出かけていた。 「みんなで、おうちで夕ご飯~」 「ちょっと! ラブったら、恥ずかしいから街中で歌うのはやめて」 ラブは、にははと笑いながら商店街の人たちに手を振って応えた。 「楽しいと、自然に歌いたくなるんだよ」 (もう……理由を聞いてるんじゃないのよ) そう思いながらも、自分もつい口ずさみそうになり顔を赤らめる。 今日は、あゆみが残業で遅くなる日。 ラブとせつなの食事当番の日。 美味しい料理でもてなそうと、あゆみが勤めるスーパーにやってきた。 『帰ってきたせっちゃん――ある日のせっちゃん。ラブとせつなの料理対決――』 「トマトが実れば、医者が青くなるんだって」 ラブが果肉の大きなトマトを、手のひらの上で転がす。 キュウリ、ナス、ピーマン、オクラ、ニガウリ、モロヘイヤ。 みずみずしい夏野菜が美しく並ぶ。 「ことわざね、わかってるわよ。旬の野菜は大事よね」 せつながあきらめたような顔でピーマンを買い物カゴに入れた。 ふと、足を止める。目に映るのは黄色いポップ。 「ニンジンが特売なのね」 「いや、ニンジンは昨日食べたばかりっていうか、その……」 せつなが無言でラブを見つめる。 「うっ……わかりました。なんてね、全然平気だよ、せつな。だって」 せつなが居ない食卓。そんなところで食べるハンバーグより、せつなが作ってくれたニンジン料理を食べる方がずっと楽しいもの。 「もう、そんなこと言われたら買えなくなるじゃない。わかったわよ、栄養は他のもので補いましょう」 「えっ! ほんとっ? やったね!」 「なんてね、冗談よ。作ってあげるからしっかり食べてね」 せつなは容赦なく買い物カゴに徳用袋の人参を放り込んだ。 ラブの悲鳴を無視しながら思う。 私も……どんなご馳走よりも、ラブと食べるご飯の方が美味しいと。 あゆみを見つけた。ファイルを持って豆腐とにらめっこしてる。 「「おかあさ~ん」」 嬉しそうにラブとせつなが駆け寄る。あゆみも笑顔で自慢の二人の娘を迎えた。 「何しているの? おかあさん」 「ああ、これはね」 発注台帳と言うのよ。と関心を持ったせつなに説明する。 一品ごとに細かく書かれた数字の羅列。前年の販売数、先週の数、気温ごとの誤差。 「より新鮮なものを、売り切れのないようにするために頑張ってるのね」 「その通り! 全てはみんなの幸せのために、ね」 あゆみがパチリとウィンクする。 広い通路、読みやすい大きさの字、背が低くても届く陳列棚。やさしさは至る所に溢れている。 忙しそうなあゆみに別れを告げ、買い物を続けた。 「苦手なものも、ちゃんと食べるのよ~」 そう言い残したあゆみに応えて、ラブが提案する。 「せつなっ、勝負しようよ!」 お互いに苦手な食材を使って一品づつ調理する。判定はもちろんあゆみだ。 「料理なら負けないよ~」 「私が上達してないとでも思ってるの」 しばらく睨みあって、そして笑う。今夜も楽しくなりそうだった。 夕飯の下ごしらえを済ませてから、いよいよ本番。 ピンクと赤の、お揃いの可愛いエプロンをつけて腕まくり。 二人とも自信たっぷりだ。 ラブはフライパンにごま油を入れて、何やら炒めだした。 短冊に切ったピーマンを後から加えて、更にじっくり焼いていく。 せつなは、おろし金を引っ張りだした。 ボールに、サラダオイル、砂糖、玉子、シナモン、アーモンド、塩、すりおろした人参を入れ、全部一緒にする。 水で溶いた小麦粉と一緒に練りこんでいく。 互いに、苦手な食材で作りあってるのに、美味しそうな匂いが鼻をくすぐる。 既に勝負は始まっていた。 『いただきま~す』 いつも通りに、美味しいラブのハンバーグ。今夜はサイズは小さめ。 そして出てきたのが―― 「これは、ピーマンの炒め物?」 砂糖と醤油で味つけて乾燥させた、たっぷりの鰹節。 カリカリに焼いたちりめんじゃこと、刻んで焼いたうす揚げ。 両面をこんがり炒めた短冊状のピーマン。 「美味しい……」 苦手なはずの、せつなの箸もどんどん進む。特有の青臭さと苦味をあまり感じなかった。 「これは……ビールが欲しくなるなあ」 「はいはい、ちゃんと用意してあるわよ」 あゆみが冷蔵庫から出してきて栓を開ける。せつながグラスを用意した。 ラブが勝ち誇った顔をする。 「まだまだ、勝負はこれからよ」 食後の紅茶の時間になる。今回せつなが作ったのはデザートだった。 「私の料理はこれ。たっぷりのニンジンを使ったキャロットケーキよ」 こげ茶色のバウンドケーキ。表面はホイップクリームで飾られている。 「うわっ~せつな、これ、すっごく美味しい」 「ほんと……やわらかい味って言うのかしら」 「上品なお菓子だね。せっちゃんにぴったりだ」 砂糖を使いすぎず、ニンジンが持つ自然な甘みを引き出す。 柔らかい生地に仕込まれた、砕いたアーモンドの舌触りが楽しい。 少しパサつくところを、ホイップクリームが上手に補っていた。 紅茶もいつもより美味しく感じられる。 「う~ん。おかわり!」 ラブが一番に食べ終わった。 一人ひとつよ。そう言ってせつなが笑う。つられておとうさん、おかあさんも。 「さあ、判定よ」 あゆみが立ち上がる。ラブをせつなは息を呑んで待った。 「今日のところは……両方美味しいので引き分け」 「「えぇ~~~!」」 「それじゃ、こうしましょう! 勝ち負けは次の対決で決めるの。今度は、ほうれんそう料理なんてどうかしら」 「おかあさん、それズルイ!」 「いいわ。私、精一杯頑張る」 「だって……わたしも苦手食材克服したいんですもの」 「無理に、夏場に食べなくても……」 圭太郎はそう言いながらも嬉しそうだ。僕は苦手なものがないからなあ、とぼやいていた。 ラブが再び歌いだす。 「みんなで、おうちで夕ご飯~」 今度はせつなも一緒に、みんなで一緒に歌いだす。 四つ葉になった桃園家に響き渡る。 それは――幸せの歌。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/956.html
ねぎぼうの140文字SS【23】 1.ラブせつ(in NS3)で『夢だけの世界』Sideラブ/ねぎぼう 「全日本ダンスコンテスト優勝はクローバー!」 あたし達、ついに優勝したんだ! 美希たんとブッキーと、せつなと一緒に。 こんなに嬉しいことはないよ……えっ、何で? 恐る恐る訊いてみる。 「せつな……ラビリンスは笑顔でいっぱいになった?」 「いいの、そんなこと」 やっぱり、ここは夢だけの世界。 2.ラブせつ(in NS3)で『夢だけの世界』Sideせつな/ねぎぼう ラビリンスは人々の笑顔で溢れていた、まるでクローバータウンストリートみたいに。 「よく頑張ったね、せつな」 そこにはラブがいた。 「もう、いいよね?あたしん家に帰っておいで。お父さんもお母さんも待ってるよ」 やはりここは夢だけの世界。 突き刺さる優しさは自らの弱音の裏返しだと気付く。 3.ラブせつで『頬に爪を立てる』(in NS3)/ねぎぼう レッスンの帰り、あの黒猫がいた。 「きゃっ」 せつなの指にかみついたらしい。 「こおらっ、ダメじゃない」 やってきたラブの頬に爪を立てるとそのままガリッと引っかいて逃げ去ってしまった。 追いかけようとして転んで顔落ち。 「せつな、大丈夫!?」 「ラブのほうこそ……ごめんなさい、明日大会なのに」 4.ラブせつで『残された時間』(in NS3)/ねぎぼう アクムとの戦いが終わり、暫しの再会を喜ぶも残された時間はそう長くない。 「一足先に帰るわね」 「元気でね」 ベリーとパインが飛び去る。 仲間たちもそれぞれの場所へ。 「せつな……やっぱり、夢の中だけでも一緒にいたい、そう思ったんだ」 「でも、叶えたい夢の中に私もいられて……嬉しい」 「!」 5.ラブせつで『縁のない話』(with セッチャン……もとい、マッサン)/ねぎぼう 朝の連続ドラマを観て、あゆみは異郷に旅立つ二人の娘を思う。 「ウチには縁のない話だと思ってたわ」 「お父さんは世界に通じるようにラブって名前をつけてくれたんだ。やっぱり縁があったんだよ」 「本当に不思議な縁ね。あのとき出逢った子が私たちのところに来て……」 「本当の娘になったんだよ」 6.ラブせつで【 音楽室でのひととき 】(with スマイル&ドキドキ)/ねぎぼう 補習を終えたラブがふと音楽室からの音色に気付く。 「せつな、ここにいたんだ?」 「エレンと真琴がセッションしようっていってくれたの。だから少しでもね」 そういって、コードを繰り返す。 手にはタコのようなものも見えた。 そんないつものせつながまた愛しく思えた。 夕映えの音楽室でのひととき。 7.ラブせつで『最初から最後まで』/ねぎぼう 「イースに戻ってしまって……皆がいなくなるのが怖かったんだ。 だから、もうイースじゃないって……ずっとせつなでいようって」 そんなイースの手をラブは力を込めて握る。 「今はこのままでいいよ。だって……貴女だから!」 最初から最後まで、そしてこれからも、イースで、せつなで、大好きな人。 8.ラブせつで『おいていかないで』/ねぎぼう 晴れやかな笑顔で、 「せつな、大好きだよ」 「私もラブのこと……」 一転表情が曇り、 「でも……ごめんね」 ラブは少年のような影に駆け寄ると、そのまま遠くに消えていく。 「ラブ、おいていかないで!お願いだから……」 ―― また同じ夢を見てしまった。 「いなくなること」がより先鋭的になっていく。 9.ラブせつで【スキンシップじゃ足りない / 最後まで】/ねぎぼう 友達のままでいい、そう思っていたかった。 でももう抑えられない。 「せつなぁ、もうスキンシップじゃ足りないよ! このままじゃあたし、せつなのこと……」 大好きなせつなを最後まで自分の欲になど染めたくなかった。 「ラブの……馬鹿! どして……もっと早く来てくれなかったの? もう……手遅れよ」 10.まこりつ=『悪癖』+「いつまでたっても変わらないな」/ねぎぼう 本を読んでいると、あの頃みたいにまこぴーが覗き込んでくる。 「どうしたの?」 「な、何でもないわ」 でも、また覗き込んできたんだけど、 その内寝ちゃうものだから肩を貸しっぱなしで動くに動けなかった。 (いつまでたっても変わらないわね……) 寝息を立てる貴女に今日は特別に膝を貸してあげる。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/276.html
第19話『帰ってきたせっちゃん――ある日のせっちゃん。せつなが帰る日(中編)――』 幸せって、なんだろう。 愛すること。そして、愛されること。 触れ合うこと。繋がること。ぬくもりを感じること。 みんながそれを手にするには、私は何をしたらいいんだろう。 私の身体はあまりにも小さくて、全ての人を抱きしめることはできない。 心なら! 心ならどこまでも大きく広げられる。だから、みんなを愛そうと思った。 でも――やがて、知ることになる。人を愛することは、その人にとって特別な人を作ることなんだって。 全ての人を愛することは、誰も愛さないことと同じ。 人を寂しさから救うのは、他人を差し置いて特別に注がれる愛情なんだってこと。 国政に携わるのは国民が望まなかった。新たなる支配者となる危惧。当然だ、イースとは支配体制における幹部。恐怖の象徴であったのだから。 キュアエンジェルの功績がなければ、この地を踏むことすら許されなかったに違いない。 そして、治安維持の役職に追いやられる。――辛い日々の始まり。 支配者から開放された国民は、自ら考え、自らの意思で幸せを求めるようになった。 統一された意思の下でのみ人は争いから解放される。そのメビウスの言葉を証明するように、些細な行き違いが諍いを招いた。 国中の、至る所で―― “スイッチ・オーバー” 白き闘衣。銀色の髪。赤いダイヤ。管理国家ラビリンスの力の象徴。 その姿を見た人々は恐れおののき、一滴の血を流すこともなく争いは鎮まった。 皮肉なことに、私に求められたのは四つ葉町の経験ではなくて、四大幹部イースとしての力だった。 ラブなら、違う答えが出せただろうか? 全ての人をあたたかい愛で包んであげられただろうか? 美希なら、希望を与えてあげられただろうか。 ブッキーの祈りなら、迷える人々の癒しとなれただろうか? 夢を持って生きて欲しい。 そう願う私は、しかし――夢の何たるかを示すことすらできなかった。 幾多の諍いを鎮め、幾集団の争いを調停し、それでも収まらぬ局面では実力行使で終結させた。 「ラビリンスの人々を笑顔と幸せでいっぱいにしたい」 そんな願いも空しく、私に向けられるのは常に恐怖と憎しみの感情だった。 それでも、この身が何かの役に立つのなら。 そう信じて各地を駆け巡った。 その治安維持の役目からも、公安組織の整備が進むにしたがって疎まれるようになる。 強すぎる力は、ただ在るだけで人々の不安を掻き立てるのだから。 「ここはもういい。ご苦労だったな、イース。すまなかった」 ウエスターとサウラーが下した決定。それは、私を職務から解放すること。 私は、この半年で何ができたのだろう? 確かめるように、駆け抜けた地をゆっくりと巡っていく。 路地で、公園で、子供たちが遊ぶようになった。 男女が、人目をしのぶように語り合うようになった。 新しい仕事を覚えようと、努力する人々の姿が見かけられた。 そんなこと、何も教えていないのに―― 「一つ一つ、やり直していけばいいのよ」 そんな声が聞こえたような気がした。みんなは自らの力で、一つ一つやり直そうとしているのかもしれない。 わかっていたはずだった。みんなは、自らの意思と力で自由を勝ち取ったんだってことを。 みんなの胸には、心には、ちゃんと必要なものが備わっているんだってことを。 みんなの愛を、希望を、祈りを、翼に変えて戦ったのだから。 「みんなを笑顔と幸せでいっぱいにしたい」 なんて大きな夢なんだろう。自分の幸せ一つ満足につかめなかった私が、何段飛ばしで駆け上がろうとしていたんだろうか。 もう一度! 私も一つ一つやり直してみよう。胸に宿る小さな灯火。これだけは確かに信じられるから。 帰ろう! 幸せの街――クローバータウンストリートに。 始まりの地――東せつなの故郷に。 私の帰りを、きっと待っていてくれる人のところに。 『帰ってきたせっちゃん――ある日のせっちゃん。せつなが帰る日(中編)――』 光の扉を抜けた先に広がる優しい景色。懐かしいクローバータウンストリートの街並み。 そこで、せつなは目を覚ます。 ここは――クローバーの丘。一年前、ラビリンスに向けて旅立った場所。そして半年前、再びこの地に降り立った場所でもあった。 朝が早かったからだろうか、どうやら眠ってしまっていたらしい。 「いっそ、このまま目覚めなかったら良かったのに……」 そんな風に考えて、すぐにかぶりを振る。この命はアカルンから預かった大切なもの。だから、他人のために使わなければならない。 その気持ちまで失ったわけではなかった。 てっきり酷い夢を見るとばかり思っていたのに、そうでもなかった。ラビリンスを発つ前の、わずかながらも希望を胸に抱いた記憶だった。 考えてみれば悪夢とは、現実が幸せな時に見る夢なのかもしれない。 失うものが無いくらい現実に救いがなければ、そもそも悪夢など見れるはずもないのだから。 「私――馬鹿みたいね」 生まれ変わって、自分の幸せを手にしたつもりになっていた。与えられたものであったとしても、それが自分のための幸せなんだと思ってた。 だから、みんなにも幸せになってもらいたいと思った。一体、ラビリンスに戻って何をするつもりだったんだろう? 自分の力で手にしたものなんて何一つないのに、分けてもらったものを配る気ででもいたのだろうか? 「何もできなくて当たり前よね」 そうつぶやいて、クローバーの葉っぱを一本引き抜く。三つ葉のクローバー。そう、これがあるべき姿。クローバーの葉が持つ本来の形だった。 ダンスだってラブの夢だった。ラブに憧れて、クローバーの輪の中に入りたかった。だから、一緒に夢見ただけだった。 やがて見つけた新しい目標。“ラビリンスを笑顔と幸せでいっぱいにしたい”それが自分の夢だと思った。 だから――全てを賭けて叶えよう思った。 「でも、それすらラブの夢なのかもしれない。だって、ラビリンスを開放しようって言ったのはラブだもの」 “世界中のみんなを愛情でいっぱいにしたい”そんなラブの夢が美しいと思ったから、自分の夢を重ねただけなのかもしれない。 だったら、自分の意思はどこにあるんだろう? 本当の自分はどこにいるんだろう? 本当の夢は? 本当の幸せはどこに行けば見つかるんだろう? 「本当のせつなは、一体どこにいるの?」 美希の問いかけを思い出す。フフッと笑みがこぼれる。愚かな自分を笑う、自嘲の笑い声だった。 「本当のせつなはどこにいるですって? どこにもいないわ。そんなこと、始めからわかってたことじゃない」 東せつななんて人間は存在しない。イースをこの世界の言葉に変換して東。メビウスの所有物である証として、短い単位の時間で刹那。 あくまで仮の名前。この世界に潜り込むために、自分で付けた名前なのだから。 愛の結晶として産み落とされて、世界を愛する名を授けられたラブと、一体どれほど違うことだろう。 「居ないのよ、美希。せつななんて子は、始めからいなかったの。始めからいなかったのよ……」 せつなが幻ならば、一体、ここにいる自分は何者なんだろう? 東せつなとして一年、キュアパッションとして半年、その前の十四年は――イースとして生きてきた。 「そう……私はイース。メビウスの僕として十四歳まで生きて――そして、死んだ。ただそれだけの存在」 アカルンに新しい命をもらったから、新しい自分を生きようと思った。 でも、イースである自分と別れて、どんな人間になるつもりだったんだろう? 寿命管理はラビリンスの国民の宿命。生まれた時から決定されたもの。何も珍しいことじゃない。 大勢の人間がクラインの操作によって死に、自分だけは生き返った。本国で亡くなった人たちよりも、ずっと悪いことをしてきたのに。 だから、今度は人々のために尽くそうと思った。奪ってきた幸せが戻らないのなら、せめてこの先の幸せを守りたいと思った。 「この街で幸せを知った。そして……守りたいと思った。それは、自分のほとんど全てであるイースを、その人生ごと否定することだった」 全てを失って空っぽだったせつなの中に、ラブは、あゆみは、圭太郎は、溢れんばかりの愛情を注いでくれた。 美希や祈里は、せつなの過去を全て知った上で許してくれた。親友として、仲間として支えてくれた。 その愛情と友情を力に変えて、せつなは戦い続けた。 ただ、守るだけでよかった。クローバータウンは、もともと幸せで溢れた場所であったのだから。 メビウスとの決戦、戦場となった故郷ラビリンスの地。そこで目にした人々は――何も持たない、かつての自分の姿だった。 今度は、この幸せをみんなの元に届けたい。そう願って旅立った。 でも……結局、何もしてあげられなかった。せつなの幸せは与えられたもの。自分の手で探して、自分の力で掴んだものではないからだろう。 だから、もう一度やり直そうと思った。 “本当の自分の夢”“本当の自分の幸せ”それを見つけたら、ラビリンスに戻ろうと思っていた。 だけど――見つからなかったら? そんなものはどこにも無かったのだとしたら、どうすればいいのだろう? 「それでも戻らなきゃ……。ここは――私の住むべき世界ではないのだから……」 ラビリンスに戻っても、きっと何も変えられない。でも、一市民としてでもいい。そこでささやかな生活を営むことができれば―― いつか、ラビリンスでも笑顔になれるかもしれない。住人と絆を結んで、自分なりの、東せつなとしての幸せを掴むことだってできるかもしれない。 いくらかの幸せを共有して、他人のために何かできることがあるかもしれない。やりたいことが見つかって、自分の夢を持てるようになるかもしれない。 「でも、本当にそれでいいの? それが私の幸せ? 私にとって一番いい生き方なのかしら? だったら――何なの? この胸につっかえたような違和感は……。私の中の何かが違うと言っている。あなたは――誰?」 四つ葉公園の中央、ドーナツ屋さんの近くでラブは荒い息を吐く。 やがて二人の少女が駆け寄ってくる。美希と祈里だった。 「美希たん、ブッキー、見つかった?」 「こっちはダメ。見かけた人もいないって」 「こちらも手がかりなしよ。もう公園にはいないのかも」 せつなが飛び出してから三人は手分けして行方を探した。しかし、どうしても足取りを掴むことはできなかった。 「美希たんとブッキーはせつなの行きそうな場所を探してみて! あたしは一度家に戻ってみる」 「オーケー、アタシは街の中を当たってみる。何かわかったらすぐに連絡して」 「わたしは河川敷から探してみるね」 ラブの胸が後悔の念に苛まれる。みんなに心配をかけないようにって、黙っていたのが全部裏目に出た。 家に駆け込むと、すぐにせつなの部屋を覗いた。戻っているとは思えなかったけど、何か手がかりがあるかもしれなかった。 その予感が的中するかのように、机の中から呼び出し音が鳴り響く。 カギ付きの引き出し。しかし、几帳面なせつなにしては信じられないことに、カギは開けられたままだった。 「せつなの携帯とは違うみたい。これは通話ボタンなの?」 「よう、イースか? どうだ、決心は付いたのか?」 「その声は……隼人さん?」 「お前はキュアピーチか?」 ウエスターの指示で携帯画面を操作する。小さなモニターに相手の姿が映る。こちらの映像も見えているらしい。 後方にサウラーも控えているのが見えた。 「ということがあったの……。隼人さん、ラビリンスでせつなに何があったのか教えて!」 「そうか、あいつはな……」 話を終えたラブが一階の居間に降りる。テーブルの上には手を付けられていない朝食が四人分並んでいる。 連絡もせずに家を空けるラブとせつなではない。そんな二人を置いて、自分たちだけ食べる気にはならなかったのだろう。 ただならぬラブの様子に、あゆみの表情にも緊張が走る。 「おかあさん、あたし、これからせつなを探してくる。だから、おかあさんは家で待っててあげてほしいの」 「どういうことなの? せっちゃんはどこに行ってるの? どうして、帰ってこないの?」 「帰って来てなかったの。せつなは、帰って来たんじゃなかったの……」 せつなの携帯電話、異空間通信機を手にラブは走る。これはラビリンスへの扉を開くカギにもなっているらしい。 これを手にしている限り、せつなは遠くには行けない。今は――とにかく早く会いたかった。 会って――謝りたかった。 「ごめん……ごめん……せつな」 どうして、帰って来てくれたなんて思ったんだろう? あたしが寂しかったから、せつなもそうなんだって思ってた。 だから――せつなが帰って来た。それを当たり前のように受け止めてしまっていた。 何の疑問も抱かずに……。 せつなは自分の都合で、一度決めたことを投げ出すような子じゃない。 どんなに辛くたって、寂しくたって、そんな理由で自分の使命を投げ出すような子じゃない。 せつなが帰ってくる理由。それは目的を成し遂げたからか、そうでないなら、ラビリンスに居られなくなったからなんだ。 失敗して、傷付いて、悔しさに震えて、その心と身体を癒すために戻って来てたんだ。 それでもあきらめ切れずに、もう一度挑むために、そのための力を蓄えるために戻って来てたんだ。 「せつなが、ラビリンスに居場所がなくなって戻って来ていたのなら……」 あたしは、せつなに優しくすることで、返ってせつなを追い詰めていたのかもしれない。 わかっていたはずなのに―― イースも、パッションも、せつなも同じ。 イースはメビウスへの忠誠のために。パッションはクローバータウンの幸せを守るために。せつなはラビリンスを幸せでいっぱいにするために。 せつなの命は、人生は、いつだって誰かに尽くすために捧げられてきた。 自分を押し殺して、自分の幸せに目を背けて、こうあるべき、こう生きるべきだって、自分に言い聞かせながら―― だから、せつなにとって一番辛いのは、自分のために誰かが不幸になることなんだよね。 「ごめん、あたしらしくなかったよ。やっぱりどちらも選べない! あたしの幸せも、せつなの幸せも」 まずは二人の再開の地、商店街の銀杏並木。そこから順に、せつなと巡った思い出の場所を探していくことにした。 大きな決意を――胸に抱いて。 美希がラブから送られてきたメールに目を通す。悔しさのにじむ表情で、折りたたんだ携帯を強く握りしめる。 自分が間違っていたのだろうか? 初めて二人きりで話した時の記憶が甦る。 「いつもはどんなお店に行ってるの?」 「ラブの行くお店よ」 「行ってみたいお店とかある?」 「別にないわ」 ラブの家で、ラブの好きな遊びをして、ラブの好きなものを食べて、ラブと同じ夢を見る。 そこには自分なんてものはなかった。 ラブと同じものを見て、同じものを感じて、同じように生きる。 それでは、ラビリンスの管理と何が違うんだろう? 強要されてないだけで、何一つとして自分で選んでいない。 人は一人として同じ人間はいない。幸せだって人それぞれだ。それぞれに好みがあり、考え方があり、夢があり、生き方がある。 だからこそ、世の中には様々な道具や仕事やスポーツや文化や娯楽が溢れているのだから。 どこで、何をするかに喜びを覚える美希にとって、せつなの価値観は理解できないものだった。 せつなにとって重要なのは、自分が何をしたいかではなく、自分がどこに行きたいかではなく、 自分が誰と一緒に居るのか、そして、その人のために自分が何をしてあげられるかだった。 だから、せつなにも自分の人生を生きてほしかった。自分だけの夢を探して、追いかけて、叶えてほしかった。 大切な友達だからこそ、もっと、もっと、幸せになってほしかった。 でも、だったら……。 (アタシはどうしてダンスなんて始めたんだろう?) そして、プリキュアになったことに、どうしてあれほどの喜びを覚えたのだろう? どちらも――自分の夢、モデルの夢にとって、妨げにしかならないものなのに。 寂しかったんじゃないのか? 自分一人だけの夢を追いかける日々が。 嬉しかったんじゃないのか? ラブや祈里と、再び一緒に過ごせる毎日が。 思い上がっていたんじゃないのか? 好きなことをやっている時の自分は、好きな人と一緒にいる時のせつなの幸せに勝っているとでもいうのか? 好みも考え方も人それぞれだと言うのなら、“好きな人と一緒に過ごしたい”そこに無上の喜びを覚える生き方だってあってもいいんじゃないのか? (だとしたら、なおさらアタシはせつなを一人にはしておけない) せつな、あなたは一人じゃない。独りぼっちにはならないって――確かに約束したのだから。 祈里の携帯にメールの着信が入る。ラブからのメッセージ。そこで知る――せつなの想い。 あの日、思いつめた表情で相談に来てくれたのに、力になってあげられなかった。 あれから色々考えて、一つの結論にたどり着いた。 それは―― 「せつなちゃんの願いは、何も間違っていない!」ってこと。 (確かにせつなちゃんの夢はわたしとは違う。それは、夢なんかよりもっと純粋で尊い想いなのだから……) “ラビリンスを笑顔と幸せでいっぱいにしたい” 自分の損得を視野に入れず、一途に相手の幸せを求める想い。 「それは夢じゃなくて――祈りよ!」 祈里は、破れそうな心臓に鞭を打って更に足を速めた。 「わたし、言ったよね? 楽しいと自然に笑顔になれるんだって。それは、せつなちゃんもラビリンスの人たちも同じよ」 伝えなければならない――“祈り”は夢ではないけれど、夢の礎にはなれるんだってことを。 自分の幸せも、みんなの幸せも、どちらもあきらめる必要なんてないんだってことを。 伝えなければならない――自分を信じることの大切さを。 夢は、信じる気持ちから生まれるのだから。 誰も――ひとりでは幸せにはなれないのだから。 呼ばれている――確かにそう感じた。 誰に? せつなの胸の中心にあたたかい光が灯る。 (これは何? 以前……どこかで感じたことがあるような気がする) さっきまで立ち上がる気力も起こらなかったのに、吸い寄せられるように身体が勝手に動き出す。 まるで、知らない誰かに操られているかのように。 クローバーの丘を離れ、せつなは、一歩、また一歩と歩き始める。 木々の間を潜り抜け、深い森の奥へと足を運ぶ。 赤、黄色、ところどころに残る緑。紅葉鮮やかな森に、秋晴れの空。落ち葉に夕日が照り返し、地面一帯が黄金色に輝く。 「綺麗……。空と木々と地面が一つの色に重なっていく……」 ここに居るはずのないラブの姿を求めて、思わず視線を走らせる。一人で見ているのは、あまりにももったいない光景だった。 そう――自分なんかには、あまりにももったいない景色だと思えた。 やがて、よく知った場所にたどり着く。木々の生い茂る森の中にあって、不自然なほどに開けた平地。 それは、かつて占い館と呼ばれたラビリンスの前線基地のあった場所だった。 “ひゅん” 突然、せつなの足元から旋風が巻き起こる。それが広がるかのように強い風が吹き付け、木々の梢を大きく揺らす。 たっぷりの水分を含んだ、青葉の匂いを運ぶ温かい風。 陽の短くなった秋の夕方には、決してあり得ないはずの――それは、真夏の風だった。 せつなを中心にして、空間があるはずの無い姿へと変転していく。 儚げな夕日は、突き刺さるような暑い日差しに変化する。 木々はそれまでの紅葉が嘘であったかのように、深緑の命の輝きを取り戻す。 (何が……起こっているの?) 背後から人の気配を感じて、せつなはとっさに身構える。そして気が付く。 それは、近寄ってくる人物を敵として認識していること。相手から、殺気を、戦意を感じ取っていること。 この世界に住むようになって、久しく忘れていた感覚だった。 一人の少女が近づいてくる。 薄いグレーの半袖シャツに、黒のハーフパンツ。年頃の女の子にしては珍しいシンプルな服装。 何も持たない両手は、固く拳を握りしめる。瞳に闘志をたたえ、ミディアムレイヤーの黒髪を風に揺らしながら―― 『帰ってきたせっちゃん――ある日のせっちゃん。せつなが帰る日(後編)――』へ続く
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/1029.html
ねぎぼうの140文字SS【28】 1.ラブせつで『お気に召すまま』/ねぎぼう 「『世界は舞台、人は役者(お気に召すまま)』か……」 シェークスピアの戯曲を手に、サウラーはその一節を呟く。 「なら、やはりこの世界はメビウス様の戯曲たるべし、ということだね」 街に向かうせつなの背中を見送る。 ペンダントの煌めきがこの世はダレかの戯曲でもない、と言うようだった。 2.ラブせつで「桜」/ねぎぼう 再建なるまでは会わない、そう決めていた。 でも、少し遠くからなら…… ――白詰草の丘から眺める街はあの日のまま。 (今日も笑顔で溢れているのかしら) ある一面が春の風に吹かれてふわふわと揺れている。 「ラブの色……?」 嬉しさと後ろめたさを抱えて、その光景に背を向けた。 今度逢うときは…… 3.[競作2015]「大切なたからもの」/ねぎぼう 昼下がり、シフォンがせつなの膝の上で眠そうにしている。 「タルト、クローバーボックス使ってもいい?」 「……うん、ええで」 「ウチも聴きとうおすえ」 ラブはハンドルを握り、ゆっくりと回し始めた。 スイーツ王国の秘宝から奏でられるのは今はただ優しい子守歌。 安らかな寝顔は大切なたからもの。 4.まこりつ=『蜂蜜たっぷりホットケーキ』+「嫌いになってもいいからね」/ねぎぼう 「私が焼いたの」 真琴は六花の焼いたソレをみて思わず頬を手でおさえる。 「美味しそうだけど……」 あの時の恐怖を思い出したらしい。 「大丈夫よ。見かけほど甘くないし、蜂蜜は喉にもいいのよ」 「嫌いになってもいいよ!私が全部食べちゃうから」 「こら、レジーナ!これはまこぴーの陣中見舞いよ!」 5.ラブせつで「反省」/ねぎぼう (ラブはすぐ感情に流されるんだから) (せつなは融通がきかない石頭だよ) 背を向けてしまった二人。 (でも) 互いを思いうかべる。 (いつも人のことを思っているのだわ) (いつも真面目に物事を考えているんだよね) それなのに……言い過ぎてしまった。 そう思った二人はベランダの窓に手をかけた。 6.[競作2015]「大切なおくりもの」/ねぎぼう ボッ、ボッ、ボッ…… 古びたボールでなおはリフティングを続ける。 昔お父ちゃんが買ってくれたプロ用5号球。 サッカーに出会って、 夢中になって、 もっとうまくなりたいって思った。 でも女の子だし、 お姉ちゃんだし…… そんなとき 「本気でサッカーがやりてえんだろ」 その思いは今でも伝わってくる。 7.ラブせつで【 授業が終わったあとの教室 】/ねぎぼう 補習を終えたラブが教室に荷物を取りに戻ると、 授業が終わったあとの教室に残っていたのはせつな一人。 「待っていてくれたの?」 こくりと頷く。 教室に差し込む夕日が二人の頬を照らす。 ラブはそんなせつなをみると何だかドキリとする。 「いい……かな?」 「教室よ?」 「大丈夫だよ、誰も来ないし」 8.マナりつ「2月28日はビスケットの日」/ねぎぼう 六花が共用試験の勉強に集中している。 「あんまり根をつめるとだめだよ~」 そう言ってマナはビスケットの欠片を口に咥えてにゅっと突き出す。 「何それ?」 「あふぁいふぉのふぉ……」 「何言ってるかわからない……んぐっ」 (無理矢理押し込まれたらしい、舌で) 「もう、マナったら!でも、ありがと」 9.[競作2015]みゆき&あかね「大切な時間のはじまり」/ねぎぼう 「雨か……走って帰ってこましたろ!」 腰のカーディガンが引っ張られる。 「星空さん?」 「日野さん、こんな雨の中濡れて帰ったら風邪ひいちゃうよ!」 「大丈夫やし、こないな雨」 「ダメ!私、傘持ってるよ。一緒に入ろ?」 「へへ、ありがとさん」 星も太陽も隠す雨を、 少しいいかもと思い始めた二人。 10.[競作2015]ラブ&せつな「大切な人と一緒に」/ねぎぼう 「幸せの素?」 イースの視線の先には四つ葉のクローバー。 「すごいよせつな。幸せを呼ぶ四つ葉のクローバーはね、 心から幸せを望んでいる人じゃないと見つけられないんだよ!」 ―― あたしもね、本当はずっとさがしてたんだ。 貴女と一緒だから見つけられたんだよ。 これからも、ね。 ありがとう、せつな! ※競作2-33に続くSSです。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/950.html
ねぎぼうの140文字SS【17】 1.ラブせつで『甘えてよ』/ねぎぼう 「ねえ、せつな。もっと甘えていいんだよ……というか、もっとあたしに甘えてよ」 「私は……いつもラブの優しさに甘えてるわ。いつまでもこんなことじゃダメなくらい」 「そんな……せつなはみきたんみたい、ううん、みきたんよりもっと自分に厳しいじゃない! 今でも自分のこと赦していないの?」 2.ラブせつで【 空にむかって 】/ねぎぼう お母さんが初めてせつなに出会ったという白詰草の丘。 ラブはぼんやりと空を見ていた。 せつなもこの空の下のどこかに……いないよね。 でもあの時のラビリンスも同じ青空。 それならば、と空にむかってつぶやいてみた。 突然空が消え、目前が帽子の陰になる。 「お久しぶり。私の事憶えているかしら」 3.ラブせつで『わかりやすいけれど、わかりにくい』/ねぎぼう 幸せを手に入れたといつもニコニコ笑うけど、 誰かの幸せのために自分が傷つくことも厭わない。 ニンジンが嫌いと言いながら、 貴女の作る付け合せのグラッセはとっても美味しい。 いつも真直ぐなのに、 あの子にだけは素直になれないっていつもぼやいてる。 そんな貴女はわかりやすいけれど、わかりにくい。 4.ラブせつで【 やさしいフリで 】/ねぎぼう 「ごめん、ラブ。あのときはアタシ、とてもやさしいフリできなかったから」 「なに言ってるの?みきたんはとってもやさしいよ。 だから、あんなこと言わせてゴメン。 心を鬼にするのってみきたんもつらかったよね。あたしも……」 「だから、もう一度あの子に……絶対せつなを見つけるわよ」 「うん!」 ※24話の隙間です。 5.ラブせつで【 鼓動を聞かせて 】/ねぎぼう 「あまり眠れてなさそうだよ?」 「大丈夫よ」 「無理しちゃダメ、こっちにおいで」 「ちょっ、ラブ!?」 ラブはせつなを抱きしめると耳をその胸に押し当てる格好に。 とくん、とくん…… 「お母さんも昔こうしてくれたんだ」 意味は解らないけど、何故か心地いい。 今はその鼓動を聞かせていて欲しい。 6.ラブせつで【 無理なおねがい 】/ねぎぼう 最後の家族写真を見ながらいつも想うんだ、今頃どうしてるかなって。 たまーにこっちに来る隼人さんに聞いたら、いつも忙しそうだけど元気にしているからって。 だから、あたしも元気にしてるよって伝えてもらうの。 せつなも時々は帰ってきてって伝えてとも思うけど、それは無理なおねがいなのかな? 7.ラブせつで『憎ませてもくれない』/ねぎぼう 「何で……ピーチロッドが……」 「ピーチはん、あんさんは愛の力で戦うプリキュアや。 敵を憎いと思うて戦こうてもアカン、ってこっちゃなあ」 「憎ませてもくれないんだ……アイツのこと」 ウエスターがせつなに言ったこと。 そしてその心の傷に今もせつなが苦しんでいる。 そう思うとやるせなかった。 8.ラブせつで『諦めきれない』/ねぎぼう 「タルトぉーっ!」 「堪忍してえなあー」 ―― 「やっぱり諦めきれないよお」 「でももうしょうがないじゃない。代わりに氷でも……もきゅもきゅ」 「(美味しそう)あたしにも!」 「ひょっと……うむっ、うっ、うん」 「ごくん。ああ、美味しかった、せつなの味の氷」 「馬鹿!でもラブのも……欲しい」 9.ラブせつで【 恋している理由 】/ねぎぼう ”恋している理由?それはね……ナイショ!” 『恋』かぁ……あたしには今はダンスかな? 憧れのミユキさんにダンスを教えてもらえるのって恋が叶ったみたいなものだもんね。 それじゃ、せつなは恋のキューピッドかな? でも、せつなの声、せつなの笑顔、せつなの仕草……目が離せないんだ、友達だもんね。 10.ラブせつで『惚れ直した?』/ねぎぼう 『チェインジ!プリキュアビートアップ!』 ―― 「もやもやしていた気持ちがすっきりした、かも」 「あたしもせつなの気持ちを受け止めることができてよかったよ」 「どこか遠慮していたのね」 先に立ちあがったピーチがパッションの手をとる。 「惚れ直した?」 「馬鹿……」 そのつないだ手に力を込めた。 ※変身しての夫婦喧嘩(汗)
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/952.html
ねぎぼうの140文字SS【19】 1.ラブ&イース(せつな)「ずっと言いたかったの」/ねぎぼう 「イース、会いたかったよ」 (え、ラブ。泣いてるの?) 「せつなはね、今、貴女が見つけた幸せをつかみとって、一生懸命頑張っているんだよ」 (そうね、一つ一つやり直しているわ) 「いつか、イースと笑って一緒にドーナツが食べられる日が来たらいいなあ」 (私もいつか、ありのままの姿でラブと……) ※【18】-10の続きの話。 2.ラブせつで【 たたかう理由 】/ねぎぼう 「せつなの幸せは何?」 へらへらと笑って訊いてくるあいつがプリキュアに姿を変える。 「貴女がたたかう理由は何?」 「私はただメビウス様のために……」 「それが……貴女の幸せ」 あいつは悲しい顔をする…… 「夢か!?」 いい夢のはずなのに寝苦しい。 早く奪ってしまえば、こんな夢など見ずに済む。 3.ラブせつで『甘やかせる権利』/ねぎぼう 「無理しなくていいんだよ、せつな」 「ううん、大丈夫。ラブに迷惑はかけられないから」 あたしも、せつなを甘やかせる権利、持ってるはずなんだけどなあ。 だから、もっと甘えてくれても…… 「でも、疲れたら少し胸を貸してね?」 「ふふっ、今でもいいんだよ」 「……馬鹿」 顔が赤いのは熱のせい? 4.ラブせつで【 ふりむかないで 】/ねぎぼう 門出の時。 「では、行ってきます」 「行ってらっしゃい」 ラブたちが精一杯の笑顔で見送る。 せつなは家族に背を向けて歩きだした。 もう一度皆の姿を…… 「ふりむいちゃダメ!」 ラブが叫ぶ。 「前を見て歩いて!」 せつなは再び歩き出す。 (ふりむかないで、お願い。せつなに涙は見せたくないよ……) 5.ラブせつで『未練たらしい』/ねぎぼう ”しゅわしゅわ~” ドーナツはすべてダメになったが、落ち込んだ姿は見せないカオルちゃん。 「また明日ドーナツ作るか~」 ―― 「ドーナツ食べたかったなあ……」 「いつまでも未練たらしいこと言わないの」 でも体を張って店を守り抜いたのはキュアピーチ。 ちゅっ 「それ、もっと食べたい!」 「……馬鹿」 6.ラブ美希で【こっちを見ないで / 無自覚な色気】/ねぎぼう ラブ、ダレかの幸せのために一生懸命になるだけじゃなくて、 ダレかの幸せを守るために強くなったのよね。 相変わらずよく凹むけど、凹んだ分ずっと強くなるわ。 あの子のおかげね。 「大丈夫だよ」 そんな顔でこっちを見ないでよ……アンタとは友達。 その無自覚な色気にドキドキするのは心が痛いから。 7.ラブせつで【手をつないだまま / 秘密だよ】/ねぎぼう 一つのシーツの中でずうっと手をつないだまま、夢のさらにその先に思いを馳せる。 「あたし、世界中でダンスを踊るんだ。そしたら……」 「私は、ラビリンスをこの街のように笑顔でいっぱいにしたいの。そして……」 握ったその手に誓いを込めた。 「それまではね、ふたりだけの秘密だよ」 「うん、約束ね」 8.ラブせつで【手をつないだまま / 秘密だよ】2/ねぎぼう ベランダでふたりはずっと夜空を見ていた、その手はつないだまま。 「そろそろ戻ろうか」 「うん」 でも手のぬくもりが名残惜しい、明日になればまた会えるのに…… 「じゃ、おやすみ」 ちゅ 「二人だけの秘密のあいさつ、だよ」 「お、おやすみ」 せつなは自分の部屋で唇に手をあてる。 「二人だけの……挨拶」 9.ラブせつで【 ゆびきりげんまん 】/ねぎぼう 「あたしもいなくならないから」 「本当?」 「うん、約束。小指をこうして」 「こう?」 「で、こう!と」 二人は小指を絡めた。 「♪ゆびきりげんまん……」 ―― 「私が……針千本呑むのよね」 「でも、今こうしているじゃない? もし、せつなが呑まないとダメならその半分あたし呑むよ」 「ラブ……」 10.ラブせつで『名字を捨ててあげようか』/ねぎぼう テレビでは 「名字を捨ててあげようか?」 「それって、逆プロポーズ!?」 ―― ラビリンス人には名字はないって言ってたなあ。 せつなも向こうではイースと言う名前に戻したってことだし。 あれも名字を捨てちゃったのかなあ? ううん、そんなことない! せつなは私の親友で家族で…… ラブの一人思い。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/943.html
ねぎぼうの140文字SS【10】 1.ラブせつで『どこか知らない場所へ』/ねぎぼう 「せつなとどこか知らない場所へ行きたいな」 「アカルンでは私が判る場所にしか移動出来ないわ。ラブが知らない場所なら……」 「あたしだけが知らない場所に行ってもしようがないよ。だから、コレで、ね」 そう言うラブの手には2枚の1日フリー乗車券。 「で、二人だけが知ってる場所になるんだよ」 2.ラブせつで『こりないやつ』/ねぎぼう 「大輔もほんとこりないやつだよ」 ちょっと呆れてたようにラブが言う。 「でも、それがアイツのいいところなんだけどね」 「本当、ダレかさんとそっくりだわ」 どんなことでも諦めないところはせつなの目にも重なって映る。 「似てないよ」 ラブは呟いた。 (もしも似ていたら、大輔もせつなのこと……) 3.ラブせつで『どこまでも行くよ』/ねぎぼう 休みの取れたせつなが四つ葉町に帰る。 待ち合わせの場所に現れたライダーがピンクのヘルメットを脱ぐと…… 「ラブ!」 「おかえり、せつな」 そういうと真新しい赤いヘルメットを渡した。 ―― 二人は今、風になっていた。 「どこまでも行くよ、せつな」 「ええ。でも夕ごはんまでには帰りましょ、ラブ」 4.ラブせつで【 あたためてあげるね 】/ねぎぼう 部屋をそっと覗く。 「おかえり」 「ごめんね、起こして」 「きて……くれる?」 以前してもらったように額で熱を測る。 「せつなのおでこ、ひんやりしてきもちいい」 添えた手の冷たさに気づいたラブ。 「あたためてあげるね」 せつなの手を取ると胸元に導き、両手で包み込んだ。 暖かくて、涙が拭えない。 5.ラブせつで『隣との距離』/ねぎぼう せつなはいつでもそばにいるんだよ。 『精一杯、頑張るよ』 だから、どんなつらいことがあってもせつなと一緒だったら乗り越えていけるんだ。 ―― ラブはいつでも隣にいるわ。 今はその隣との距離が少し長いけど。 『幸せ、ゲットね』 でも、本当は距離なんて関係ないのよ。 ラブとはいつも一緒にいるから。 6.ラブせつで『ゲームを始めようか』2/ねぎぼう 「よく来たね、イース」 サウラーの視線の先には囚われのキュアピーチ。 「ラブ!」 「このゲームに勝ったら返してあげるよ」 パッションハープを身構える。 「但し、変身も瞬間移動も無しでだよ」 悔しそうに変身を解除する。 よりによってラブが自分の身代りになっている。 「さあ、ゲームを始めようか」 7.ラブせつで『指切り』/ねぎぼう 「いつか帰ってきてくれるよね?」 「ごめんね、ラブ。それは約束出来ないわ」 気休めは言えなかった。 ラブも並々ならぬ覚悟を感じ取る。 「じゃ、約束しよ?」 ラブが指切りの手を見せ、せつなにも同じ形を促した。 そして小指を絡める。 「倒れちゃうまで無理しないこと。疲れたらちゃんと休むんだよ」 8.イース様で『手だけつないで』(11月4日はイース様の日)/ねぎぼう 「君の作戦とやらを見せてもらったよ」 「監視か?随分余裕だな」 「君が親友のふりをしている少女とはまだ手だけつないでいないようだね。 やはり本当は君に心を許していないということかな」 「ふん、馬鹿馬鹿しい」 ―― 自室に籠ったイースはペンダントを眺める。 そして持ったその手をずっと見ていた。 9.ラブせつで【 繰り返し呼ぶ名前 】/ねぎぼう 「せつな」 その声に振り返る。 「せーつなっ!」 繰り返し呼ぶ名前。 「どうしたの?ラブ」 「へへっ、呼んでみただけ」 「もう、ラブったら」 潜入するために与えられたかりそめのコードネーム。 今は心地よく感じている自分がいる。 ラブが何度も呼んでくれた名前。そして、 「ラブ、せっちゃん、ご飯よ」 10.ラブせつで『頑なに拒む両手』/ねぎぼう 「私はもうイースではない」 それでもイースだった。 その過去と罪に染まったこの手は残り続ける、たとえプリキュアになっても。 キュアピーチが差し出した『幸せの素』を頑なに拒む両手。 やはりこの手は幸せを掴みとることを許された手ではない。 「あなた達の仲間になるには……私は手を汚しすぎた」
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/944.html
ねぎぼうの140文字SS【11】 1.ラブせつで【 真っ赤なウソ 】/ねぎぼう 「真っ赤なウソ、か。君のダイヤの色に似つかわしい言葉だね」 「ふん、そんなこと。私はメビウス様のお役に立つことを為すだけだ」 (プリキュアを倒すのではない。プリキュアでなくすのだ。そうすればあいつを……) ふと湧いた思念にかぶりを降る。 (馬鹿な。自分の嘘に自分が惑わされることなど) 2.ラブせつで『うん、知ってる』/ねぎぼう 「僕達の街にもプリキュアがいたんだよね」 「うん、知ってる!」 子供たちの話声。 悪の足音が遠くに去った今、プリキュアの存在はいわば『都市伝説』となっていた。 「あたし達も昔は……」 「今はもう普通の女子、というのね」 「そうだね。せつなもここではそうだもんね」 「ラブ!」 束の間の二人の時。 3.ラブせつで『永遠を現実にしてしまう人』/ねぎぼう 計画により永遠を現実にしてしまう人が支配していた世界。 その中で明日をも知れぬ私達は謂わば「鬼子」のような存在だった。 だから、あの時デリートホールで私達を消去しようとしたのかも知れない…… 「せつな!明日はコレでお出かけ、しよ?」 ラブの手には1日フリー乗車券が2枚。 「ええ!ラブ」 4.ラブせつで【 こたえはここに 】/ねぎぼう 転入に際して過去の学習状況を把握するためのテスト、らしい。 せつなはその回答用紙を前に考え込んでいるようであった。 (答案の書き方がわからないのかも?) 「こたえはここに書けば……」 やおら鉛筆をとるとあっという間に解答欄が埋まっていった。 「(簡単すぎて)何か裏があると思ったの」 5.ラブせつで『一番厄介な存在』/ねぎぼう 不運なことに一番厄介な存在が潜んでいた。 しかしこれを乗り越えないと至福の時はやってこない。 目の前に救世主がいるではないか? ここは全てを託すとしよう。 代償が伴うのも覚悟の上だ。 「せつな、ニンジン代わりに食べて!」 「ダメよ、ちゃんと自分で食べて」 「デザートのプリン半分あげるから」 6.ラブせつで『ちょっと黙って』2/ねぎぼう 33話でもしもピーチの参戦がもう少し早かったら 「そいつは裏切り者だ。また裏切るかもしれないぞ」 「せつなはね……」 「それってすごーく嫌な奴じゃないか?って、何だお前は!」 「ちょっと黙って聞いてたら、あたしのせつなに何て事言っちゃってんの!? アンタなんか一緒にタコ焼きにしてやんよ!」 7.ラブせつで『長く一緒にいた影響』/ねぎぼう 「イースさんはどうしていつもそんなに頑張れるのですか?」 母国再建の難題多き中でも笑顔を絶やさず人々を勇気づけるせつなに尋ねた者がいた。 「どんなに苦しくても、貴女の笑顔には助けられていますよ」 (長く一緒にいた影響かしら……) ピンクのブレスレットをちらりと見つめる。 「それはね……」 8.それぞれの未来で頑張る二人。/ねぎぼう レッスンやステージでどんなに疲れていても、寝る前には机に向かうラブ。 クラスメートに借りたノートを書き写し、その内容を整理するのだ。 せつなが歴史だけは苦手としていたその訳を知っていたから。 せつな達の後悔を繰り返さぬためにももっと歴史を学びたい。 鉛筆を握るその手には赤いブレスレット。 9.ラブせつで【 一緒に住もう 】/ねぎぼう あのときの「家においでよ」は行き場所を失ったせつなを助けるため、 お父さんとお母さんに頼んでの言葉だった。 今はお互い居場所も持っていることをわかっている。 それでも大切な人と帰ってくる場所と時間を少しでも共有したい。 真新しい部屋の鍵と共に決意を込めた言葉。 「せつな、一緒に住もう」 10.ラブせつで『運命という罠』&【 目と目が合った 】/ねぎぼう 駆け付けたラブは、せつなは自分が医務室に連れていくからシフォンを見失った祈里の所に行ってと言う。 せつなの秘密を垣間見た美希の目と目が合ったラブはあくまで『自分なら大丈夫』を崩さない。 ラブを、ラブの友情を信じたいという気持ちが戦士としての冷徹さを鈍らせた。 これも運命という罠。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/949.html
ねぎぼうの140文字SS【16】 1.ラブせつで『愛してはいるんだけど』/ねぎぼう 「彼のこと愛してはいるんだけど、なかなか会いにもいけなくってね。 そしたらいきなり彼が『こっちに来ちゃいな』って。でも……」 相変わらず由美の愚痴だかのろけだかをラブは聞かされる。 今は離れて暮らす最愛の家族に思いを馳せた。 『ここが私の家だから』 この言葉を信じている。 いつの日にか。 2.ラブせつで【 仕事のあとに 】/ねぎぼう 今年のクリスマスはトリニティの妹分を卒業しての初めてのミニステージ。 事務所からクリスマスプレゼントだというから何だろうと思ったらびっくりだったよ。 ミユキさん達と別での初仕事は違った意味で緊張するよ~!? そう、このお仕事のあとには……せつなが帰ってくるからね。 精一杯、頑張るよ! 3.ラブせつで 続【 仕事のあとに 】/ねぎぼう 今日はいよいよせつなが帰ってくる日。 この世界の視察をしてからということなので、 あたしも営業が終わった後で待ち合わせることにしたけど、 こんなときに限って結構おしちゃって…… まだ飾りが残っているツリーの下にはもうせつなが先に来ていたんだ。 久しぶりに見るせつなが……本当にいとおしいよ。 4.ラブせつで【 朝起きたら隣には 】/ねぎぼう 朝起きたら隣にはせつながまだいてよかった。 「ラブが起きる前に出ちゃうつもりだったの……」 「あたしも今日は偶然早めのシフト。今から朝ごはん作っとくんだけど、時間ある?」 「ええ」 ―― 「お父さんとお母さん、うまく描けてるかしら?」 「うん、せつなにしては上出来」 「何それ、ラブ!?」 5.ラブせつで【 おとしもの 】/ねぎぼう 『おとしもの:3月14日携帯電話(ピンク)を拾得しました』 (これはあいつの変身アイテムか? 奪ってしまえばもう二度と変身できない。そうすればメビウス様からも……) ―― 「あなたがこれを落とされたのですか……お名前は?」 「(え?あいつの名前は……何だ?)キ、キュアピーチ!」 「はあ?」 6.ラブせつで『愛する臆病者』/ねぎぼう 「せつな……何で独りで行っちゃったの?」 「私は皆が、ラブがいなくなることが怖い。 でもラブを失うくらいなら……私がこの世から消えてしまえばいいって」 「せつなの……馬鹿。目の前で死んじゃうなんてもう二度とご免だよ!」 そこにいるのは失いたくない者と喪いたくない者、愛する臆病者同士。 7.ラブせつで『アンビバレンス』/ねぎぼう 「貴女にとってとてもつらい結果を招くかも知れないのよ?」 何故私はこんなにむきになっている? ラブがプリキュアでなくなればいいだけ。 そうなれば倒さなくて済む、倒すべきこの敵を。 主に仇なすこの子を……守ってあげたい。 「馬鹿な……そんなことあるわけない」 せつなの心に生まれるアンビバレス。 8.ラブせつで【ギュってして / 押し倒された】/ねぎぼう 「こんな私だけど、前みたいに……ギュってして……くれる?」 もうせつなじゃない、イースなんだ。 でも変わらない、あたしの大好きな人。 「イース、おいで」 両手を拡げる。 その胸に飛び込んでくるのを受けきれず、そのまま押し倒された。 「痛ったーい……」 「ごめん、ラブ」 「夢じゃない、よね?」 9.ラブせつで【 留守番電話 】/ねぎぼう あゆみの携帯が光っている。 留守番電話かしら? 再生ボタンを押す。 『せつなです。お仕事お疲れ様です。……よいお年を』 生真面目な声。 ―― 「おかえりなさい、せつなから電話あった?」 「ええ、メッセージは聴いたわ」 「そっかぁ……応答の声もお母さんが入れてたらよかったかも?」 「そうね」 10.ラブせつで『大人になって、それからどうするの』/ねぎぼう 「早く大人になりたいと思うよ……」 「大人になって、それからどうするの?」 「あたしもラビリンスに行くの。そしてせつなを助けるんだ」 「ダンスの夢はどうするの?」 「一緒に叶えるよ。もっと欲張って頑張るから」 そんな貴女が……今でも羨ましいと思ってるわ 「じゃあ、勉強もね」 「たはは……」